「遺留分」請求が争族を招く~相続法改正、2019年に成立か~

遺言おじいさん

日経新聞2月10日の朝刊に『遺留分請求、争い回避重視』といった記事があったので考察と共に紹介する。

民法の相続に関する規定(通称:相続法)が約40年ぶりに大きく変わる。
遺族に保障される最低限の取り分(遺留分)の制度を大幅に見直すほか、葬儀費など必要な資金を故人の預金から
引き出しやすくする。自筆証書遺言を保管する制度を設けるなど他にも注目点は多い。
「相続」を「争族」としないための心得を持っておきたいところだ。

相続法の改正案は法制審議会(法相の諮問機関)で3年間にわたって審議がされてきた。
今年3月上旬に通常国会に提出され、成立すれば2019年中に施行される見通しだ。
法曹関係者が特に注目するのが「遺留分」の見直し。相続法によれば、遺言がある場合、それに基づき遺産を分けるのが基本
となる。ただし、法定相続人には最低限の権利が保障されており、これを「遺留分」という。

遺留分の割合は相続人の構成によって変わるが、多くの場合、法定相続分の半分が分け与えられる。
故人の配偶者の場合、法定相続分は全財産の2分の1なので、遺留分は「4分の1」ということになる。
ところが、この遺留分を考慮していない遺言により、しばしば遺族間で争いが生まれている。
故人Aが残した遺言には、全財産8000万円のうち、5000万円相当の自宅を妻へ、3000万円の預金があるうち、
2500万円は長男に、500万円を次男に分けると書かれていた。

ここで問題となるのが次男の取り分。次男は本来、遺留分割合8分の1、ここでは1000万円を受け取れる権利がある。
しかし、遺言上の配分額は半分の500万円。不足分を渡せと次男が要求し、母や長男が拒否すれば争いは避けて通れない。
遺留分を巡る争いは数年に及ぶケースもある。なぜなら、権利を侵された人が遺留分を取り戻す請求(遺留分減殺請求)を相手方に申し立てると、
すべての財産が相続人たちによる【共有財産状態】になってしまうからだ。

預金ばかりか自宅の土地・建物まで共有となり、すぐには分割ができなくなる。
最悪の場合、共有状態の財産を分割するための訴訟(共有物分割訴訟)に至るケースもあるのだ。
遺留分を請求する人のほとんどは不動産ではなく現預金での受け取りを望むことが多い。故人Aのケースでも多く遺言を受けている長男が、その一部で弟に払えばよいわけで最初からそれを目指すのが得策だろう。

今回の法改正では遺留分に満たない分は現金(金銭債権)で受け取れることになる。これを遺留分侵害額請求権と呼ぶ。
これにより、共有物分割訴訟は起きづらくなるだろう。とはいっても現金をすぐに用意できない場合も考えられるため、裁判所の判断で支払期限を延ばせる仕組みも設ける見込みだ。
遺留分を現金で返すやり方は今でも裁判所では調停や和解の場で優先して提案されている。現実には遺産と呼べるものが自宅しかなく、どうしても現預金を用意できない事例も見受けられる。
そうした事態を避けるには早い時期から相続に備え、現預金を多めに用意する意識が求められる。

法改正でもうひとつ注目したいのが預貯金の換金に関する見直しだ。
今の制度では遺言が残っていない場合、遺産は法定相続人の共有となり、分けるには全員が話し合わなければならない。
そこで整備されているのが一部分割とよばれる仕組みだ。現在でも相続人全員の合意があれば、金融機関は預金の一部引き出しに応じるが、改正法ではこれを明文化する。
さらに仮払い制度も新設。条件を満たせば相続人の合意がなかったとしても一定額の預金を引き出せるといったものだ。
金額は、相続人1人当たり「預金額の3分の1×法定相続分」までとなる。協議がまとまらずに調停・審判に至った場合は裁判所が判断。大幅に緩和される予定だ。

後妻業などで有名になった自筆証書遺言に関しては財産目録の一部を自筆で書かなくてもよくなった。
表計算ソフトを使い、財産構成が変わった際には上書きして対応できる。その自筆証書遺言を法務局で保管する制度も新設される。申請時には法務局が、遺言の中身が法定の書式通りかチェックするため、ケアレスミスも減るだろう。

保管制度を使えば、相続発生後に必須だった「検認」も不要になる。検認とは裁判官の立ち会いの下、開封する手続きだ。
このほか配偶者が自宅に終身住み続けられる居住権を新設。婚姻期間20年以上の夫婦間で自宅を贈与した場合、
それを遺産分割の計算から除く。子の配偶者らが介護などで特別に貢献していた場合、その分を金銭で請求できるようにする。

法改正の趣旨を踏まえ、相続で相続人がもめずに不公平にならないための対策が必要だ。2015年1月にあった相続税制改正に加え、相続法にも改正のメスが入った。法の改正が急務となるほどに相続税対策の準備が必要な事例が増えているのだ。争族を招かないためにも現金などの分割しやすい資産で相続することも必要かもしれないが、相続税の支払いで子どもに託した現金がとんでいってしまったらまた別の問題が発生するだろう。相続資産の種類を吟味し、60代から考える必要がある。

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