平成 29 年の税制改正大綱で、 流行りの相続税対策についにメスが入る !?

平成 29 年の税制改正大綱で、 流行りの相続税対策についにメスが入る !?

■不公平感により見直されるタワマン節税

富裕層向けの相続税節税対策として、喧伝されたタワーマンション節税(通称タワマン節税)に網をかけようと、政府が平成28年12月に閣議決定した平成29年度の税制改正大綱に、タワマンの固定資産税評価の見直しが盛り込まれました。平成29年度の税制改正大綱にはタワマン節税の他にも、相続税対策に有利とされていた手法の節税効果が薄くなるような税制改正も盛り込まれています。

具体的に言うと、「①タワマン節税の固定資産税評価の見直し」「②非上場株式の評価方法の改正」「③広大地の評価見直し」「④海外に居住する日本人の相続税納税義務の見直し」などが挙げられます。

まず始めに、タワマン節税について説明します。相続税評価額と実勢価格のかい離で注目を集めたタワマン節税ですが、階数に応じて固定資産税の税額に差をつける制度を新たに導入することが決まりました(上図参照)。マンションの販売価格は、一般的に眺望の良い高層階になればなるほど高くなります。1階と50階で販売価格が3倍違うということも、珍しくありません。ところが相続税評価額については、建物価格と面積だけで決められており、1階でも50階でも同じ広さであれば同じ評価額でした。そのため富裕層が節税対策として高層階のマンションを購入するケースが続出し、社会的に問題視されてきたということです。今回の改正では、高さ60m を超える建物に対し、高層階については固定資産税を上げて低層階については下げる措置をとることになりました。具体的には中間階を基準にし、1階上下するごとに固定資産税が0・25%ずつ変動する仕組みが導入されました。

適用は平成30年度以降に新たに固定資産税が課税されるマンションに限られており、すでに所有しているマンションに対しての影響はなく今回の改正は固定資産税額に限られていることから、その影響は極めて限定されていると考えられます。しかし、タワーマンションに関する税制の見直しはこれで終わりとなるわけではなく、今後の動向に注目していくことも必要でしょう。

今回の税制改正では、固定資産税の増額ということで決着がつきそうですが、タワマン節税に対しては、国税庁の厳しい目が光っていることを忘れてはなりません。国税庁の定める相続税の「財産評価基本通達」では、相続税評価額は本来、時価での評価を原則としており、時価がわかりにくい財産は便宜的に路線価などを時価として扱っているスタンスであるということです。相続発生の直前直後のマンション売買は、時価が特定しやすく時価と相続税評価額とのかい離が大きければ、国税庁側から否認されることもあります。具体的な例として国税庁が平成23年に否認したケースでは、相続人の父が亡くなる1ヵ月前に父名義で3億円のマンションを購入し、マンションを相続した10ヵ月後に3億円で売却した事案です。3億円の預貯金がマンションを購入するだけで評価額6000 万円となり、この相続人の相続税率を50%とすれば相続税額で1億800 万円もの差が生じることになります。国税庁側はこうした評価を否認し、マンション購入時期と相続時期が近いため購入時の3億円を相続税評価額としました。そもそも財産評価基本通達には、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という規定があるため、不動産で

相続税対策を行う場合には、購入の経緯、目的、経済的合理性、そして購入後の利用状況がポイントとなります。何らかの節税を行う場合には、これらのポイントをしっかり理解し、節税スキームのリスクを認識した上で行き過ぎた税金逃れだと思われないように慎重に判断することが必要です。

■税務署の目が光る法人化も要注意!?

2つ目は、取引相場のない株式、いわゆる「非上場株式」「自社株」の評価方法の改正です。中小企業の社長は「自社株対策」と呼ばれる株価対策を行っています。少しでも相続税の負担を減らし、次の世代へ引き継いでいくためには必要なことです。最近では、相続税対策のために資産管理会社や資産保有会社を立ち上げ、子世代に資産を承継するための会社を設立する人も増えた影響で、平成29年度の税制改正大綱では、取引相場のない株式の評価方法に関する見直しが行われ、中小企業が自社の株価を算出する時によく使用する「類似業種比準方式」の算式が変更になりました。

計算式は、上の図を確認ください。これが現在までの「類似業種比準方式」計算方法です。これが、改正後は、分母の「5」は「3」に変わり、「×3」が「×1」に変更されることになります。この改正の意味合いは、過度な株価対策を防止し、利益を増やそうとしている高成長企業の負担を軽減する措置です。そのため、この改正は利益が上がっている業績の良い企業のオーナー負担を軽減することにはなりますが、利益の圧縮を用いた株価対策による株価の抑制効果は減少することになります。関係法案が成立すれば、平成29年1月1日以降に開始した相続・贈与からの適用です。この影響は「資産保有会社」を運営している地主や資産家にも当然適用され、利益水準が低くかつ多くの資産を保有している資産保有会社にとっては、従来の評価方式に比べ株価が上昇する可能性があると言われています。また、純資産価額方式では、相続・贈与からさかのぼって3年以内に購入した不動産は、相続税評価額ではなく相続・贈与時の時価(実際の取引価格)で評価するため、計画的な資産保有会社の運営が必要になるでしょう。

このように日本政府は富裕層に対して課税強化の流れを示しているため、資産保有会社の優位性も薄れていく可能性が十分に考えられます。結局のところ、しっかり資産保有会社を継続するのか、相続税対策のテクニックとして使うのかで、メリットは変わってくるということです。もし仮に、相続税対策としてだけ資産保有会社を使うのであれば、その選択をする前にまずは、暦年贈与や相続時精算課税制度を使った相続税対策のメリットとしっかり比較することを勧めます。なぜなら、小手先のテクニックは、税務署にとって追徴課税を取れる格好の獲物だからです。

■まだまだメスが入る細かな税制の見直し

また、今回の税制大綱ではわずか3行の記述ではありますが、大きく影響しそうなのは広大地の評価方法についての見直しです。これまで面積が1000㎡(平方メートル)以上の土地(3大都市圏では500㎡)の評価については、土地の形状にかかわらず路線価と面積に比例した補正率を使った評価方法を採用していました。ところが土地は形状によって取引価格がかなり異なるのが常識のため、相続税評価額が取引額を大幅に下回る場合に、これを是正するために不整形や奥行きの程度などの広大地の形状を加味した補正係数を新たに導入することになります。これは実勢価格と相続税評価額のかい離を埋めていく改正なので、不動産オーナーや土地持ちのアパート経営者が相続税対策のために使っているような場合には、実質的に増税となる可能性が高いと言われているのが現状です。

また、国際的な相続税の見直しにも注意が必要になります。海外に居住している日本人の相続税納税義務について、国外財産が対象外となる要件を「日本に住所を擁していない期間10年(現行は5年)」に拡大されました。そのため、資産を海外に移転させるといった小手先の対応が、取りづらくなるでしょう。

このように、富裕層の節税対策には、年々、課税強化されていく流れが今後も続くでしょう。これからは、過剰な相続税対策にメスが入る時代になってきました。これから求められている相続税対策は、購入の経緯、目的、経済的合理性、そして購入後の運用状況がポイントとなります。行き過ぎた相続税対策にならないようにするためには、相続税対策だけが目的になるのではなく、資産運用の延長線上に相続税対策があることを忘れないでください。

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