東京 23 区への転入超過が進む背景とは(ⅰ~ⅳ)

東京 23 区への転入超過が進む背景とは(ⅰ~ⅳ)

東京23区への転入超過が進む背景には、私たちを取り巻く生活環境の変化が起因しています。現代においてライフスタイルは多様化の一途をたどっており、それによって東京の賃貸需要は拡大傾向にあるのです。上の図のようにライフスタイルの変化により核家族化が進んでいるため、そのニーズを満たすコンパクトマンションの人気が高まっています。具体的なライフスタイルの変化は、以下の通りで、

持ち家志向の低下

高度外国人人材・留学生の増加

単身赴任の増加

外国人旅行者の増加

お年寄りの都心回帰

23の大学に通う大学生の増加

晩婚化・未婚化

といった理由が、単身世帯の増加を招く要因になっています。これらの理由を一つずつ紐解いて、23区の賃貸ニーズの拡大を確認していきたいと思います。

まずは、ⅰ~ⅳまでの理由を確認していきましょう。

持ち家志向の低下

「持ち家か? 賃貸か?」衣食住の「住」に関わる永遠のテーマと言えるかもしれません。以前であれば、持ち家を選択する人の割合が多かったのでしょうが、近年では持ち家志向の低下が目立っています。理由は、大きく2つ。1つ目は、近年話題にあがっている空家問題です。マスコミで空家に関するニュースが、多数報道されているなか、自宅の資産価値に疑問を抱いている人も増えています。わざわざローンを組んで購入しても、将来の資産価値が維持できないのであれば、現役時代は便利な都心に賃貸で住み、老後は住み心地の良い地方に住むというライフスタイルを選択する人も増えてきました。2つ目は、子どもを産まない世帯の増加です。子どもが増えなければ、広い家を購入する動機もなく、そのまま利便性の高い都心に賃貸で住むケースも増えています。ライフスタイルが多様化するなか、家を持つことがステータスではなく、利便性の高い地域に住むことがステータスと言えるため、持ち家志向は低下しました。今後も自分のライフスタイルや年代に合わせて、住まいを変えるということは、スタンダードになってくるでしょう。そういった思考の人は、賃貸派に多いことも特徴の1つです。

高度外国人人材・留学生の増加

日本で働く外国人労働者の数が4年連続で増え、100 万人を超えたという報道がされました。アジアを中心に技能実習制度を通じた人材や留学生、高度人材などが順調に増え、日本企業に勤務しているということです。政府は労働者の確保に加え、先進技術などに取り組むために外国人人材の受け入れを重視しており、今後もさらなる拡大を目指しています。その結果、在留外国人数は200 万人を超え、日本に住む外国人は増加傾向です(上図参照)。このような、優秀な外国人労働者を受け入れる場所も、都心から整備されていきます。地方から仕事を求め若者が流入してくることの他に、海外からも都心への人の流れは、年々増えることでしょう。

単身赴任の増加

近年、単身赴任者が増えています。総務省の「就業構造基本調査」(上図)によると、平成24年の単身赴任者は推計約99万人、女性も15年前から約9割増え、19万人と増加傾向です。

特に、子どもがいる世帯に関しては、単身赴任を選択することが増え、40代では約4割の割合で単身赴任を選択しています(上図参照)。ものづくりの機能が海外に次々と移転しているなか、単身赴任先は首都圏に集中しているのも特徴です。以前の日本に比べて、子どもの教育環境に重きが置かれているなか、ご主人が単身赴任しなければならないという状況は仕方が無いことかもしれません。その他にも、女性の社会進出が進んでいるため、配偶者の仕事の都合で別居を選択することや、ご両親の介護で転勤ができないといった家庭も多いでしょう。日本人のライフスタイルが多様化した現代では、単身赴任という選択肢は今後も増えてくる可能性が大きいと言えます。

単身赴任が増加傾向のなか、どのような物件が選ばれるのでしょうか。仕事のために単身赴任するわけですから、ほとんどの人が独身の時のように通勤利便性の高いところに住まいを求めます。そのため、都心の1K 物件や1LDK の物件が選ばれるようになることが多いのです。そして、単身赴任は一人暮らしの引っ越しと違い、家具家電を一から揃え直さなければなりません。企業や単身赴任者は、家具家電を買う一般の賃貸契約よりも家具家電つきの物件に住んでもらった方がトータルのコストが抑えられるため、そちらの方を選択する傾向があります。そういった意味でも、家具家電が元からついているマンスリーマンションを法人契約で賃貸契約することが多く、人気が集中するのは至極当然のことです。そういったマンスリーマンションも、ワンルームマンションのオーナーから第三者に又貸しできる転貸借という契約形態で借りられていることがほとんどになります。つまり、単身赴任者が増えれば、マンスリーマンション会社からの賃貸ニーズも高まるため、都心ワンルームマンションの賃貸需要は、ますます高まることでしょう。一人暮らしが増えているから賃貸ニーズが増えているのはもちろん、単純に住まいとしての枠組みから外れたショートステイやホテルの代わりとしても、ワンルームマンションの需要は高まっているということです。もちろん、そういったニーズの恩恵を受けるのは、単身赴任者が多い大企業の周辺であることは間違いありません。

外国人旅行者の増加

訪日外国人が急増しているのは周知の通りで、平成28年には2000 万人を超える外国人が来日しています(上図参照)。政府は、さらなる外貨の獲得のため、平成32年に4000 万人、平成42年には6000 万人の訪日外国人客数を目指すと宣言しました。

ここで問題になってくるのが、宿泊施設の問題です。今は、ホテルを取るのも一苦労で、受験シーズンにはホテルが取れなくて困っている受験生が増えているというニュースも報道されています。

この問題を解決するために運用検討がされているのが、いわゆる「民泊」です。旅館業法との兼ね合いや近隣問題など解決すべき問題があるため法整備が遅れていましたが、政府は平成29年3月10日に民泊を全国で解禁する住宅宿泊事業法案(民泊新法)を閣議決定しました。この閣議決定により、家主には都道府県へ届け出、仲介業者には観光庁への登録を義務付けることで、誰もが民泊事業を営めるようになります(上の図参照)。営業日数の上限は年間180 日とし、地方自治体が条例で短くできる規定も盛り込まれました。早ければ、平成30年1月にも施行される見込みです。

この民泊が整備されたあかつきには、賃貸市場に与えるインパクトがとても大きいのは間違いありません。なぜなら、通常に賃貸で貸すよりも民泊を運営した方が、家主の収益性は高まるからです。民泊仲介の世界最大手である米国のエアビーアンドビー社によると、エアビー利用訪日客は、平成28年に370 万人いたと公表されました(148 ページの図参照)。順調にエアビー利用者が増えれば、賃貸住宅から民泊に転用される物件も増えることでしょう。政府は、平成28年に2000 万人いた訪日外国人数を東京オリンピックがある平成32年には4000 万人に、そして、最終的には6000 万人を目指しています。最終的に訪日外国人が4000 万人増えた場合、全員が1泊だった場合のシミュレーションでも、4000 万人÷ 365 日= 約10万9000部屋が今後は必要になる計算です。当然ホテルの建築も進むでしょうが、相当数の賃貸物件が民泊に転用されることも予想できます。

もし仮に、民泊市場に参入する人が民泊物件として選ぶのであれば、外国人が目的地まで辿り着きやすい駅近物件を選択することがほとんどでしょう。つまり、駅近物件から民泊物件として運用が始まるのであれば、賃貸市場から魅力的な駅近物件がなくなってしまうため、場所によってはその地域の平均家賃が上がることも考えられます。そういった恩恵を受けられるのも、物件をたくさん建築できる場所のある地方より、建物を建てる土地の少ない都心であることは間違いないでしょう。平成27年の相続税改正により、不動産市場は大きな影響を受けました。こういった法令改正により不動産市場は大きく影響を受けるため、高いアンテナを張って情報収集をすることが非常に重要なことです。

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