いざという時に、かかりつけの相談相手を持つ! 専門家の活用

■「誰」に「何」を聞けばいいのかを知っておく

どんなに準備をしていても、いざ相続というタイミングは必ずきます。いざ、相続が発生した場合、相続の手続きには期限があり、上の図のスキームを10ケ月以内にやらなければなりません。

資産が多い場合には、遺産分割協議に時間もかかるでしょう。
あらかじめ生前贈与を行っておけば、生前贈与を行う前に比べ、相続による遺産分割する対象資産も少額になるため、スムーズに実施できるメリットも覚えておいてください。
いざ相続が発生した時に、これらのスキームを素人だけで実施しようとするには、かなり無理があります。
そんな時は、専門家の力を借りることも必要です。
しかし、「何を誰に相談すればよいか」わからない人も多いことでしょう。
まず、どんなことを誰に頼めばよいかを確認する必要があります。

相続の専門家にも領域があり、それぞれの役割は主に以下の通りです。

◉ 司法書士相続した不動産の名義変

◉ 行政書士遺産分割協議などの書類の作成や戸籍謄本などの収集、金融機関の相続手続き

◉ 不動産業者不動産の売却や賃貸の手続き、相続した不動産の実勢価格のアドバイス

◉ 弁護士遺産分割や争族になった場合の解決

◉ 税理士相続税の計算や、相続税申告、路線価の計算などの手続き、金融機関の相続手続き

 

また、タスク別に役割をまとめたのが、上の表です。

相続が発生した時に、調査、遺産分割協議書作成は各専門家であれば対応できますが、その後はそれぞれの専門性を活かしたタスクを請け負います。
つまり、相続が発生した場合、ワンストップですべてが解決するわけではなく、各々の領域の仕事を各専門家に任せなければならないということです。各専門家のタスクは、以下の通りになります。

「弁護士」…裁判所周りの仕事が中心になります。
交渉、調停、審判などのトラブルを解決する人周りの役割が、主なタスクです。弁護士が介入することで、円滑な相続を目指すことになります。

「司法書士」…法務局周りの仕事が中心になります。権利関係を確実に登記することで、資産の保全を行うことが、主なミッションです。司法書士が介入することで、権利関係を確実に移転することを行います。

「税理士」…名の通り税金周りの仕事が中心になります。相続税の計算が、主なタスクです。相続税の申告を行い、国民の義務である納税を全うするための手続き代理になります。

特に、税理士の活用は、真剣に考えなければなりません。
平成27年事務年度の相続税実地調査によると申告漏れ件数は1万1935 件で、そのうち約81%の9761 件は申告漏れで課税されています。
悪質な重加算税賦課も1250 件と約12%の割合で発生している現状を考えると、実地調査をされるケースのほとんどが追徴課税です。

 

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さらに、平成29年1月1日以降の法定申告期限がくる申告から、税金の不正に対するペナルティーに関して加算税率が上がります(288 ページ図参照)。
個人で頑張って申告をしても間違っていた場合には、ペナルティーを科される可能性も否定できません。
相続に対する税務署の目は、それほど厳しくなっています。
ペナルティーを払う前に、税理士と相談しておけば、こういったリスクも回避できるでしょう。

このように各専門家が役割を全うすることで、相続は円滑に終焉を迎えることができます。
もし、知り合いがいない場合には、お付き合いしている不動産業者に相談すれば、専門家同士連携もあるためニーズに応じた専門家を紹介してくれるでしょう。
相続税の納税が確実に発生する家庭の場合、相続事案が発生する前に専門家に相談しておけば、より円滑な相続税対策が可能です。
相続時にお世話になるのであれば、その前から相談しておいた方がスムーズかつ、より精度の高い相続税対策が可能になるでしょう。
当然、専門家を活用するわけですから、コストはかかります。
しかし、問題がこじれてから依頼するより、こじれる前に依頼した方が、解決までの時間が短縮できるためコストは抑えられるでしょう。
そのため、どの問題をどの専門家に相談したらよいか、理解することも重要な相続税対策の1つと言えます。

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