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思いをカタチにできる「信託」と いう選択肢
成年後見制度や遺言にはかなりの制限があるのに比べ、信託は受益者のために委託者と受託者の間で相談すればフレキシブルな対応が可能になります。
認知症を発症してしまえば個人信託は選択できないため、すべてを1つの契約で行える仕組みである個人信託は早めに結ぶ必要があり、運用が始まれば相続における手続きもスムーズになるでしょう。
ここで、現在の主流である成年後見制度と個人信託の違いについて、理解を深めておきましょう。
成年後見制度と個人信託の特徴的な違いは、財産運用の点と制度運用の点、相続発生時の手続きです。
遺言や成年後見制度は、手続きが煩雑かつ厳格なため、個人の意思というよりは司法の監視下という意味合いが強く、個人の意思を反映しにくい制度と言えます。
例えば、財産の運用においては、裁判所の監視下に置かれ積極的な運用を禁止されるため、不動産の購入や処分、生前贈与は禁止事項です。
つまり、相続税対策は、認知症を発症した時点でほぼできなくなります。
さらに、裁判所へ1年に1度、報告する義務もあり制度運用の手間もかかるでしょう。
こういった司法の監視下に置かれる前に個人信託を利用し、家族間における相続に対する思いを「カタチ」にしていく方が、今の時代にはあっているかもしれません。
個人信託には、遺言ではできない相続人以外への資産承継も指定することができます。
家族の在り方も多様化している現代では、司法の下ではなく家族の裁量でさまざまな事項を決定できる個人信託の方が、時代に沿っているのではないでしょうか。
そんな、個人の思いをカタチにする個人信託のスキームとは、具体的に上図の通りになります。
ここで、主に登場するのは、大きく4人です。
1人目は、「委託者」です。「委託者」は、財産の所有者で財産を預ける人になります。個人信託の局面で言うと親であるケースが、ほとんどです。
2人目は、「受託者」です。「受託者」は、財産を預かり、管理・運用・処分する人で、この場合、家族のなかから選出され、子どもがなることが多いでしょう。
3人目は、「受益者」です。「受益者」は、財産の管理・運用・処分で利益を得る権利(受益権)を有する人になります。
はじめは、親がなり、相続により子世代に受益権が相続されるケースがほとんどです。受益権の相続・贈与が行われた場合、通常の相続・贈与と同じく受益権に対しては、相続税評価額分の相続税・贈与税がかかることになります。
4人目は、「信託監督人」です。「信託監督人」は、司法書士や弁護士、税理士などの専門家がなることが多く、信託運用の報告を受けることで、信託契約の管理監督をすることが主な役割になります。
「委託者」「受託者」「受益者」「信託監督人」が、決まった後は契約に移行します。
信託契約の簡単な流れは、以下の通りです。
まず、委託者と受託者の間で、信託契約を結び信託財産の管理・運用・処分権限を委託者から受託者に委任し、その後は、受託者から受益者に財産給付・分配を行います。
この給付を受けることを受益権といい、受益者は意思判断能力が欠如した後も、受託者から生活費を管理してもらうことができ、安心して生活が送れるようになるでしょう。
その給付・分配を管理・監督するのが信託監督人です。
もちろん、これらの手続きも手間はかかりますが、成年後見や遺言に比べればはるかに手間はかかりません。