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東京23区への転入超過が進む背景②
東京23区への転入超過が進む背景
都心への転出増加、それによるワンルームマンションの需要増について下記のような理由があげられるとして、前頁ではⅰ~ⅳを確認してきました。
- ⅰ.持ち家志向の低下
- ⅱ.高度外国人人材・留学生の増加
- ⅲ.単身赴任の増加
- ⅳ.外国人旅行者の増加
- ⅴ.高齢者の都心回帰
- ⅵ.23区の大学に通う大学生の増加
- ⅶ.晩婚化・未婚化
ここでは引き続き、ⅴ~ⅶを確認していきましょう。
ⅴ.高齢者の都心回帰
近年、一人暮らしの高齢者の数が増えています。上の図表のように年々、一人暮らしの高齢者は増加傾向にあり、平成47年(2035年)には4人に1人が一人暮らしの高齢者です。
一人暮らしの高齢者のなかには、生活の利便性を求めて都心に移り住む高齢者も増えています。
上の図のように将来的には都心で暮らしたいと考えている高齢者は、約25%というアンケート結果も出ました。
もちろん、ライフスタイルに多様性を求められている時代ですから、郊外に住みたい高齢者もいるでしょうし、田舎に住みたい高齢者も当然のようにいます。
しかし、近年問題になっている高齢者の自動車事故などを回避するためには、車無しでは生活できない地方より、利便性の良い都心や周辺のベッドタウンに移り住む高齢者が増えることは十分考えられることです。
「利便性の高さ」と「単独世帯用の住まい」といったキーワードに当てはまる「駅から近いワンルームマンション」も、高齢者からの需要は増えていくでしょう。
ⅵ.23区の大学に通う大学生の増加
都心にキャンパスを移転させる動きが、大学の間で広がっています。通学に便利なことや繁華街が近いなどの理由で、都心移転後は学生の志願者も増えている状況です。
そもそも、大学キャンパスの郊外移転が進んだのは、日本が高度成長期を迎えていた昭和40年代頃のことで、都市部に人口や産業が集中することを防ぐ「工場等制限法」が昭和34年に首都圏で、昭和39年に近畿圏で成立したからです。
大学が都心ではなく郊外に建設されていた理由は、当時の法律により都市部における大学の新設・増設が制限されていたことが原因でした。
その一方、高等教育への進学率が3割を超えるなど受験生の急増により、学生を受け入れるため郊外に広大な校地を取得し移転を決断した大学は少なくなかったという背景があります。
しかし、平成元年代以降、都心の空洞化が社会的な課題となったことから、工場等制限法が平成14年に廃止されたのです。
小中学校の統廃合や工場等の郊外移転なども進み、キャンパス開発のための用地取得がしやすい環境も整い始め、大学にとっては「都心に戻れる」社会状況が揃ってきました。
そのため、上の図のように多くの大学が都心にキャンパスを移していて、その数は平成14年以降で40校超です。
今後もその流れが続くことが予想されています。都心にキャンパスがある大学は、その利便性の高さから応募倍率は軒並み上昇傾向です。
一般的に大学経営の収益は、大きく分けて学生からの授業料と入試の受験料という2本立てになります。
志願者が増えれば受験料という収益を上げることができるので、郊外から都心への波は今後も続くでしょう。
都心へ単身の学生が増えれば当然ワンルームマンションの需要も高まるため、ワンルームマンション経営の未来は非常に明るいと言えるのではないでしょうか。
ⅶ.晩婚化・未婚化
50歳まで一度も結婚をしたことがない人の割合を示す「生涯未婚率」について、平成27年の国勢調査の結果、男性で23.37%、女性で14.06% にのぼったことがわかりました(上の図参照)。
前回の平成22年の結果と比べて急上昇し過去最高を更新、男性のおよそ4人に1人、女性のおよそ7人に1人が生涯未婚で、「結婚離れ」は急速に進んでいるのが現状です。
晩婚化・未婚化は少子化社会において大きな問題ですが、収益性を確保したいワンルームマンションのオーナーにとっては大きなプラス要因と言えます。
ワーキングプアと呼ばれる低賃金で働いている若者も多いことから結婚に踏み切れないといった現状や、女性の社会進出が進むにつれ男性に依存しなくても人生を送れることから、晩婚化は進み今や日本が抱える大きな問題です。
今後も晩婚化・未婚化の流れは加速していくことが予想され、平成42年(2030年)には男性の約30%・女性で約25%が生涯未婚という予測結果もあります。
上の図のように平均初婚年齢も右肩上がりで、結婚をするまでの期間はほとんどの人が一人暮らしのため、ワンルームマンションに住む期間が長期化するのも自然な流れと言えるでしょう。
晩婚化や未婚化は少子高齢化にとって大問題ですが、ワンルームマンションのオーナーにとってはメリットがあります。なぜなら、一人暮らしの期間が長いということは、1人当たりの入居期間が長くなる傾向があり、オーナーの空室リスクが大幅に減るからです。
この場合、卒業後就職し新たな部屋を求める大学生より、転勤がない限りその部屋に住み続ける社会人に対して部屋を提供できる都心の方が、より多くの恩恵を受けることができます。
このように単独世帯が都心に集まるいくつかの要因を挙げましたが「地方から都心」「海外から東京」という人の流れは、留まることを知らず、ワンルームマンションの需要も高い水準を維持し続けるでしょう。
東京への一極集中的な人口流入は、要因が1つではないことを理解していただければと思います。複数の転入要因があるからこそ、東京への人口流入は加速していくのです。
アパートやマンションといった貸家の収益を支える入居需要は、大部分が立地に左右されます。
アパートとマンションの一番の違いは、土地の用途地域です。
土地にはそれぞれ都市計画に基づき用途地域が決められており、用途地域ごとに建てられる建物も制限されています。一般的にアパートは、住居系の地域に建てることが多い建物です。一方で、マンションは商業地域や工業地域といった、住居系以外の土地に建てられることが多くなります。商業地域は、周辺に店舗や飲食店も多く利便性が高い施設が多いのが特徴です。
非住居系地域率(区の面積から住居系の地域を引いた面積/区の面積)が高い区のトップ3(平成27年4月1日現在)は、台東区(75.79%)、中央区(64.8%)、千代田区(61.08%)となっており、都心に行けば行くほど店舗やオフィスなどの用途に使える土地が増えるため、利便性が高くなるのは当然かもしれません。
そういった利便性の高い地域だからこそ、人は集まってきます。
収益をうまく確保するためには、利便性が高く賃貸に出しても採算がとれる地域で物件を購入することです。人を引き付ける街並みは、再開発を繰り返すので利便性の高さが維持され続けます。そういった立地を選ぶことが成功の第一歩であると言えるでしょう。
今後高齢者が増えるにつれ、相続事案も増えていく事でしょう。郊外では戸建て住宅に住む人がいなくなり、空き家問題がさらに加速していきます。相続人のいないケースも出てくるでしょうから、地方都市での物件価格に大きな錘になっていく事かと思います。
都心のワンルームマンションでは人口流入を背景に安定した需要が見込まれます。経済力という背景を活かして仕事のある場所に物件をもつ事でリスク対策を採ることが重要です。